山取りの樹齢100年以上クラスが数百本。鬼無駅すぐの立地で産地に訪れる人がまず足を運ぶ老舗の盆栽園
鬼無駅の北東にある「北谷養盛園」には、60年ほど前に瀬戸内の島々から「山採り」した樹齢100年以上と推定される黒松盆栽が400〜500本もあります。中型〜大型の盆栽を得意としています。
自然が樹形を育んだ山採りの盆栽は貴重品
鬼無駅の北東にある「北谷養盛園」には、60年ほど前に瀬戸内の島々から「山採り」した樹齢100年以上と推定される黒松盆栽が400〜500本もあります。
「山採り」とは、山野に自生する自然木を鉢に根付けすることで、畑で育てられる多くの盆栽とはひと味ちがう貴重品です。当時、瀬戸内の島々では、風呂のたき付け用に黒松が育てられていたのですが、強い海風にさらされる島の松にはほどよいくねりがあり、自然が思いがけない樹形を育んでいたのです。
「2代目が島から採取し、3代目が日々手をかけてさらに形作ってきました。価値のあるものを、わたしの代でダメにするわけにはいきません。優秀な盆栽たちの才能を、ちゃんと伸ばしていくのが僕の使命」と4代目の北谷隆一さんは語ります。3代目の背中を見るうち自然に跡継ぎを志していたそうです。
盆栽職人の仕事の8割は水やり。葉や幹に健康な勢いがあるか、土が乾いていないかなど、1本1本の木々と対話しながら毎日水を与えます。植物としての健康を保てた上で、剪定や植え替えが行えるのです。北谷養盛園には2200本の鉢植え以外に、1500本の地植え、2000本の苗があり、これら全ての管理を3代目と隆一さんが行っています。
ただただ松が好き。でも好き過ぎてもいけない。
盆栽は生きている芸術品。経年変化するので、手をかけたらいつでもアートとしての価値がより高まる可能性を秘めています。他の芸術にはないその面白味が隆一さんを引きつけます。
「ただただ松が好き。遺伝子が、盆栽に向かっていたのかなあ」と照れながら、「でも好き過ぎもダメなんですよ」とも。熱烈な愛好家ほど心酔してしまうと売りたくなくなったり、値段を高く付けすぎてしまったり、弊害もあります。盆栽との距離感も大切にしているのだそうです。
隆一さんの言葉は、全てが我が子との接し方のようで、いかに盆栽に愛があるかが伝わってきます。
新世代の跡継ぎとして、時代に即した発展を目指す
隆一さんはYouTubeで、初心者に盆栽の育て方を教える「4代目の盆栽枯らさない塾」を配信しています。Facebookでも盆栽の楽しみ方を発信していて、どちらも特に外国人愛好家からの反応が大きいのだそうです。園への見学者にも外国人が増えており、輸出の規制が難しいとはいえ、海外に盆栽に大きな可能性を感じています。
「国内ではこれまで、展覧会で愛好家の方々が自分の持つ盆栽の芸術性を競い合う文化がありました。これからはウェブの活用の時代。ウェブ上で愛好家が刺激し合えるような面白いことができないかと考えたりしています」。
盆栽の命と職人の技を守り未来へと送りながら、新しい価値を発想する。隆一さんの盆栽人生はとても幸せそうです。