肥料をしっかりと使いこなして盆栽の成長を促進させよう
正直、肥料がなくても盆栽は枯れやしない。よく勘違いされるのが、肥料は盆栽の食料であると。これは正しくない。肥料はあくまで補助的なもの。植物にとって水が食料だとしたら、肥料はサプリみたいなものだ。
より健康に生きていくためにどのように肥料をつかっていくか考えよう。
肥料について
樹や草を鉢内で小さく育てる盆栽においては、摂取できる水分、養分には限りがあります。適切な水やりをすることはもちろん不可欠ですが、肥料についても盆栽の健やかな成長を促進するために重要です。
自然の樹や庭木は、地中に広がった根から必要な養分を吸収しますが、盆栽は限られた鉢土のみから吸収します。依って、肥料の量によって多大な影響を受けます。
水やりも頻繁に行うため、養分が水に溶け、鉢穴から流れ出してしまいます。土も少なく、盆栽用土には養分もさほど多くないため、放っておけば栄養不足にもなりかねません。
肥料を与えないと、花が咲かなかったり、葉の色が黄色く変色したりしてしまいます。かといって、たくさんの肥料を与えてしまうと、枝が伸びすぎたり、葉が肥大したりして樹形づくりに悪影響を及ぼします。
根が傷んで、樹勢が弱っている樹に肥料を与えると、養分を吸い上げないため効果がないだけでなく、根腐れを促し、ひどい場合には枯れてしまうこともあります。
ただ不足している養分を補えばいいという単純なものではなく、与え過ぎたり、肥料切れを起こしたりすることのないように、環境や樹種を考慮し、それぞれの肥料の特徴を知って、的確に肥料を与えるようにしましょう。
植物の構成成分
植物は太陽光線のエネルギ-を利用して、水と二酸化炭素から炭水化物を合成し、同時に酸素を大気中に放出しています。
(※光合成についての詳細は水やりについてのページを御覧下さい。)
植物の構成体
植物細胞は主にタンパク質から構成され、タンパク質は炭水化物の他に、窒素やリンなどが必要です。
植物は約60種類の元素から成り立っており、そのうち16成分が必須元素と言われています。16成分には、炭素、酸素、水素などと、3大元素と言われる、窒素、リン酸、カリウム以外に、カルシウム、マグネシウムなどの3つの中量元素、ホウ素、鉄、マンガンなどの7つの微量元素があります。
必須元素一覧
空気と水の中に多量に含まれる
炭素(CN)大気中から摂取生命体の構成元素
酸素(O)大気中から摂取 生命維持に必要不可欠
水素(H)大気中から摂取 水の構成元素
3大元素
窒素(N)
たんぱく質、光合成に必要な葉緑素や核酸等の構成元素。植物が生育する上で最も基本となる栄養素。葉、茎、根、実など植物全体の生育を促進させる働きがあります。他のすべての栄養素の働きを助成する。葉の緑色をよくする働きがあり、葉肥と言われます。
不足した場合
原形質や葉緑素の生成が少なくなり、全体的に生育が悪くなり、株も貧弱になり、全体が黄色くなったりします。結実にも悪影響です。
過剰な場合
葉が増えすぎて色も濃くなりすぎ、枝葉が貧弱に伸び、病害虫の被害が発生しやすくなります。開花や結実に悪影響を及ぼします。
リン酸(P)
核酸(DNA)・酵素の構成元素で開花・結実、根の伸長、発芽、花芽の付きを促進。細胞分裂の盛んな茎や根の先端に多く含まれます。細胞膜の構成成分でもあり、糖類と結合し、植物体内での呼吸作用に役立ちます。花肥、実肥と言われます。
不足した場合
初期の生育や葉色が悪くなり、花数が減少し、開花、結実にも悪影響です。急激に欠乏した場合、葉が小さく、茎も細くなります。
過剰な場合
過剰症は出にくいですが、極端に多い場合は、丈が伸びず生育不良となります。
カリ・カリウム(K)
植物体の直接の構成成分ではありませんが、たんぱく質や炭水化物の合成、移動、蓄積などの化学反応を促進する補酵素の働きをします。根からの水分調節に関係し、根の育成を促進。耐乾性、耐病性を高める作用があり、根肥と言われます。
不足した場合
水分の調節作用が不調となってしおれるようになってしまいます。発芽せず、葉が暗緑色になり、根腐れがおきやすくなります。
過剰な場合
過剰症は出にくいですが、丈が伸びず生育不良となります。
中量元素
カルシウム(Ca)
ペクチンという多糖類と結合し、細胞壁を強化し、病害虫に対する抵抗力を付ける働きがあります。植物体内でできる老廃物(シュウ酸やペクチン酸などの有酸物)を中和、土壌改良としても役立ちます。
不足した場合
植物の正常な生理作用を害しますので、葉色は淡緑色になり、根の生育が悪くなり根や葉の生長点が枯れるようになります。
過剰な場合
過剰症は出にくいですが、土壌が強アルカリになり、鉄やマンガン、ホウ素などを不溶性にし、吸収できなくしてしまいます。
マグネシウム(Mg)
葉緑体の生成に役立つ重要な構成成分です。リン酸の代謝にも関係し、炭酸の同化作用と、植物体内でのリン酸の移行に重要な働きをしています。細胞分裂、タンパク質の合成にも有用です。肥料用語では「苦土」と言われます。
不足した場合
葉緑素の形成が妨げられますので、葉脈の間が黄色に変化したり、機種によっては生育不良となったりします。
過剰な場合
生育障害が現れて、ホウ素、マンガン、亜鉛などの吸収が阻害され、欠乏症が誘発されます。
硫黄
植物体を構成する幾つかのたんぱく質の構成成分の1つ。通常ですと土に十分含まれています。
不足した場合
全体的に葉の色が薄くなって、生育不良となります。古い葉は特に黄色くなって、窒素が欠乏した場合の症状が出ます。
過剰な場合
過剰症は出にくいですが、極端に過剰になると土壌が酸性化して、窒素、リン酸、カリなどの吸収に障害が出ます。
微量元素
ホウ素(B)
非金属元素。カルシウムの吸収を促進。細胞壁を強化し、根や新芽の生育の促進、細胞分裂や受粉などに関わります。
不足した場合
細胞膜の形成が悪くなり、水分とカルシウムの吸収に悪影響が出ます。生長点がとまり根や新芽の生育も悪くなり、部位的に黒くなります。
過剰な場合
歯の色が黄色や茶色に変色します。
鉄(Cu)
葉緑素の生成。マンガンと関係しつつ葉緑素のタンパク質と結合し、酸素を運びます。代謝や呼吸に関わる酵素の構成成分。
不足した場合
土の酸度がアルカリ性になると、鉄分欠乏症が起こりやすくなります。若葉で葉脈の間が黄色、白色になり、根が黄色に変色しやすくなります。
過剰な場合
根が発育不良となります。マンガンやリン酸の吸収が阻害されてしまいます。
マンガン(Mn)
微量元素の中で植物体内に一番多く含まれている元素です。光合成、鉄代謝、ビタミンCの合成、葉緑素生成などに必要です。
不足した場合
古い葉から症状が現れ、鉄の欠乏に似た症状で、葉脈の間が黄色くなります。実物では、果実が着色不良となります。
過剰な場合
葉に褐色の斑点が現れ、根が黒く変色します。実物では樹皮が荒れて、ひび割れを生じたり、鉄欠乏症が発生したりにも影響します。
亜鉛(Zn)
様々な酸化還元酵素やたんぱく質、でんぷんなどの合成に関わります。葉緑素、成長ホルモンの生成に関与しています。
不足した場合
生育不良となり、生長が止まり、葉も小さいままとなってしまいます。葉脈の間も黄色く変色します。
過剰な場合
新しい葉が黄色くなったり、褐色の斑点が出てきたりします。
銅(Cu)
酸化還元酵素の構成成分として呼吸作用に関わっています。葉緑素の形成にも間接的に関わり、たんぱく質、炭水化物の代謝にも有用です。
不足した場合
新しい葉の先端が白くなってしおれてきてしまいます。枝枯れや新しい枝が伸びずに萎縮することもあります。
過剰な場合
根が生育しにくくなってしまいます。
モリブデン(Mo)
レアメタル(希少金属)と呼ばれる金属のことです。植物にとっては各種たんぱく質の生成に関わり、窒素代謝に役立ちます。
不足した場合
古い葉で、葉が湾曲したりよじれたりします。
過剰な場合過剰症は現れにくいですが、葉が白化することがあります。
塩素(CI)
各種炭水化物の合成や、光合成、作物の成熟に関与しています。線維化作用がよくなり、病気の抑制を高める働きがあると言われています。
不足した場合
新しい芽が黄色く変色したり、葉の先端が枯れたりしてしまいます。
過剰な場合
リン酸が吸収されにくくなり、土壌が酸性に傾きます。
炭素、酸素、水素以外の13元素は主として土から供給され、水に溶けたものが根から吸収されます。
上記の元素のほとんどは土中に含まれており、雨や水やりによって補給されるので、植物の体内で吸収、消費されても、比較的大丈夫ですが、三大元素である、窒素、リン酸、カリウムは、植物の生育上多量に必要となるので、肥料で補うようにします。
肥料は、樹種や肥料の種類の他に、天候、環境、水やり、植え替えなども、微量元素の補給に大きく影響してきます。
肥料の種類
肥料は一般的には有機質肥料と化学的に合成された無機質肥料(化成肥料)があります。
有機質肥料は、土の中の微生物により、無機質に分解された後植物に吸収されます。そのため、施してから、効果が出るまでに時間がかかる遅効性肥料に分類されます。一方無機質肥料は、水に溶けてすぐに効き目が出るものが多い、速効性肥料となっています。
盆栽では主に有機質肥料が用いられます。
有機質肥料
自然界の物質が原料
油かす、骨粉、牛ふん、鶏ふん、魚かす、草木灰(そうもくばい)など
長所
ミネラル、ビタミンなどを多く含み、吸収もしやすく、与え過ぎた場合も大きな失敗につながりにくくなっています。土壌の微生物により分解されますので、土壌改良としても役に立ちます。
短所
自然界のものが元になっていますので、独特の匂いがあって、さほど手を加えていない分カビが生えたり、虫がわいたりします。効果が出るまでに時間がかかります。比較的高価。
無機質肥料
化学的に造られたものが原料である化学肥料。
尿素、熔成リン肥、硫安、過リン酸石灰など
長所
有機質肥料と異なり、成分が明記されているので調整がしやすいです。大量生産が可能なので、手に入りやすい。臭気を伴わず、持ち運びしやすく、与えやすい。
短所
効果が強く現れるため、使用方法、量を誤ると、植物にダメージを与えてしまう恐れがあります。速効性のものから徐々に効く緩効性の製品まであります。
有機質肥料の種類
油かす
菜種や大豆など油分を多く含んだ種子から油を抽出して残った絞りカスのことを言います。
原料となるもの 菜種、大豆、綿実、落花生、ゴマ、亜麻仁、椿、米ぬか、ヤシなど
数ある種類の中でも菜種油かすが一般的で、窒素含有量が多く、リン酸やカリウムも適度に含んでいます。油かすも種類によって、成分量が違い、商品によっても成分に幅があります。
油かすの標準含有成分量
肥料名窒素 / リン酸 / カリウム
菜種5~6 / 2 / 1
大豆7 / 1 / 2
綿実6 / 2 / 1
落花生6 / 3 / 1
ゴマ6 / 2 / 1
亜麻仁5~6 / 2 / 1
ひまし5~6 / 2 / 1
米ぬか2~3 / 5 / 1
油かすはバクテリアなどによって、たんぱく質はアンモニアや硝酸になり、水に溶けて植物に吸収されます。この工程は徐々に行われるので、肥効=肥料の効き目も持続性があります。
施し方
単独で使用する場合は、水で練って小さなお団子状にして乾燥させ、鉢土の上に置く「置き肥」の方法がほとんどです。他に、水で溶いてから腐らせて、「水肥」として与える場合や、粉末のままで与える場合、水を加えて団子状にしたものを乾燥させずにすぐ与える場合もあります。
骨粉
一般的には、にわとりや豚の骨を粉砕して、高熱で醸成したものを指します。これを「蒸製骨粉」と言い、他にも、生の乾燥させた骨を粉砕したものを「生骨粉」、内臓やくず肉、血液なども混ぜて粉砕後に乾燥させた「肉骨粉」などがあります。
骨粉の標準含有成分量
肥料名窒素 / リン酸 / カリウム
蒸製骨粉2~3 / 20 / 1未満
生骨粉3~4 / 20 / 1未満
肉骨粉5~8 / 6~10 / 1未満
施し方
単独で使用されることはあまりなく、リン酸を多く含んでいるので、油かすや草木灰などの他の肥料と配合して施肥します。使用する際は、ふるいで粗い部分を取り除いて、粉状のものを油かすに混ぜて団子状にします。
牛ふん
牛のふんにわらやおがくずを混ぜて、発酵させたもののことです。窒素、リン酸、カリウムをバランスよく含んでいて、鶏ふんと比べて含有量が半分以下となっています。肥料成分がほとんど含まれていないため、肥料焼けを起こしにくく、鶏ふんに比べ悪臭が少なくなっています。
施し方
肥料成分がほとんど含まれていないため、油かす、草木灰などの他の肥料と配合して施肥します。
鶏ふん
にわとりのふんを乾燥させて作ったもので、他の動物のふんよりも、窒素、リン酸、カリウムなどの三要素がたくさん含まれています。鶏糞をそのまま使うと、大きさにもばらつきがあり、羽毛や雑草なども混入することがありますが、市販のものは、大きさも適当で、熱処理も施されているため、使いやすくて衛生的です。
施し方
油かす団子に混ぜ込むと使いやすくなりますので、油かすと鶏ふんを半々の割合で混ぜて作ります。化成肥料並の速効性がありますので使用量に注意しましょう。
魚粉
魚を乾燥させて粉末状に砕いた肥料です。魚の加工食品を作る際に出た廃棄物を利用しています。別名「魚粕(さかなかす)」と呼ばれています。窒素とリン酸が多く含まれていますが、カリウムが不足しています。
施し方
油かす、米ぬか、骨粉などと混ぜて、水で練って団子状にして1週間ほど置いて発酵、乾燥させます。
草木灰
わらや落ち葉、枯れ草など草木を燃やした後の灰にことで、粉状もしくは粉末状です。簡単に自作できる肥料として古くから使用されてきました。主成分はカリウムで、リン酸、酸化カルシウムなどは含まれていますが、窒素は含まれていません。
施し方
窒素を含んでいないので、窒素を含んでいて、カリウムが不足している油かす、鶏ふん、魚粉などと組み合わせると、肥料バランスがよくなります。
バイオゴールド
窒素、リン酸、カリウムはもちろん、カルシウム、マグネシウムなど、天然のミネラル成分が多く含まれています。高温処理されていて清潔、気にならない程度の匂いです。
施し方
しっかり発酵させているので、根に触れるような場所でも比較的大丈夫です。株を太らせたい場合、花実をたくさんつけたい場合は多めに与えると効果的です。
有機質肥料の標準含有成分量まとめ成分
肥料名窒素 / リン酸 / カリウム
油かす(※平均値)5~6 / 1~2 / 1~2
骨粉(※平均値)4 / 17~20 / 0
牛ふん2 / 2 / 2
鶏ふん3~4 / 2~3 / 2~3
魚粉7~8 / 5~6 / 1
草木灰0 / 3~4 / 7~8
バイオゴールド4~6 / 5~7 / 3~4
無機質肥料の種類
ハイポネックス
窒素、リン酸、カリウムはもちろんのこと、植物の生育に必要な15種類の栄養素をバランスよく含む液肥です。万能肥料で、手にも入りやすいので、盆栽にもよく使われています。
施し方
使い方表示を参考に、現役を水で希釈して、1週間から10日程度に1回の割合で株元に与えます。
IB化成
化成肥料の中でも緩行性のもの。じわじわとゆっくりと効いて、植物にはアンモニア態窒素として吸収されます。指で押してつぶれたら、効き目が切れていると考えられます。
施し方
小さい鉢であれば、3~4粒、大きな鉢であれば7~8粒、植物の様子を見ながら2~3ヶ月に1回程度与えます。
マグアンプK
粒状で肥料の効き目が長く続きます。植物の生育に必要な成分をバランス良く配合した緩行性の肥料です。粒の大きさによって肥料の持続効果に違いがあります。土に混ぜ込むか、鉢土の上にまいておきます。
無機質肥料の標準含有成分量まとめ
肥料名窒素 / リン酸 / カリウム
ハイポネックス6 / 10 / 5
IB化成S110(内IB窒素) / 10 / 10
マグアンプK6 / 5 / 3~4
メネデール
微量元素である鉄をイオンの形で含む水溶液なので、素早く吸収されます。厳密に言えば肥料ではなく、活性剤的な役割で、水分や養分の吸収を高めたり、光合成を活発にしたりする働きもあります。
施し方
表示の希釈率100倍(50倍~200倍)にて、1週間に1度を目安に使用します。肥料ではありませんので、水やりと一緒に薄めものものを与えてもいいでしょう。
肥料の形態
固形肥料
粒状、粉状などの固形の状態の肥料のことです。効果はゆっくりで肥料効果が比較的長く持続します。油かす、骨粉などを固めて作る有機質肥料と、窒素、リン酸、カリウムなどを化学的に合成した無機質肥料に分かれます。盆栽でよく使われる玉肥も固形肥料の分類に入ります。
玉肥
置肥用として造られた団子状、角状の肥料。急速な分解などがなく効果が持続するため、盆栽の肥料としてもっとも利用されています。
粉肥
粉末状で施肥しやすくなっています。市販されている粉肥の種類には、骨、魚、油かすなどを粉末状にしたものがあります。油かすは単体で使うことができますが、骨粉、魚粉などは分量を守って、他の肥料と混ぜて使用します。
液肥(水肥)
文字通り、液体の肥料のことです。原形が粉末や粉状のものでも、与えるときに溶かして液体にしたものも含めます。速効性があります。
肥料を作る場合
玉肥の作り方
[用意するもの]
油かす
水 適量
混ぜるための容器
蓋付きのポリ容器、パッド
1.粉状の油かすに水を加えてよく練ります。水の量は油かすを手で握ってみて、水が少し出る程度。
2.1を蓋付きの容器に移して、時々かき混ぜて1~2週間程度発酵させます。(※夏は1週間程度)
3.発酵させたものを、手で握って直径2~3cmの団子状にし、パッドや板などに並べて天日で十分に乾燥させます。
窒素、リン酸、カリウムの植物にとっての三大栄養素をバランスよく配合するために、油かすに骨粉、草木灰などを少量加えたり、ハイポネクスを入れたりして作る場合もあるようです。
液肥の作り方
[用意するもの]
油かす
水
混ざるための容器
蓋付きのポリ容器、パッド
1.粉状の油かす1に対し、水を10の割合で加えます。
(※機種によってはリン酸、カリウムを補うため骨粉や魚粉などを2 ~3割程混ぜる場合もあります)
2.容器に入れてよくかき混ぜ、蓋付きのポリ容器やパッドなどに移します。
3.2を直射日光を避け、風通しのいい場所に置き、時々かき混ぜて1~2ヶ月発酵させます。(夏は半月程、冬は3ヶ月程かかることもあります)
4.できあがったら上澄み液を取って、10倍程度に水で薄めて使用します。
↓
ペットボトルでも作れます!
[用意するもの]
油かす
水
ペッドボトル
1の工程は同じ。
2.ペットボトルの蓋を締めて油かすと水がよく混ざるように、上下に振ります。よく混ざったら蓋をゆるめます。
3の工程は同じ、混ぜる際はペットボトルの蓋は閉め、混ぜ終わったら蓋をゆるめておきます。
4の工程も同じ。
※リン酸、カリウムなどを補うため、油かすに、骨粉、魚粉、草木灰などを入れて肥料を作る場合もあり、樹種や樹の状態によって使い分けをします。
液肥ハイポネクスを入れて作る愛好会もいるようで、オリジナルの玉肥作りで盆栽の状態が健康に保てれば、盆栽育成において、より充足感があるかもしれません。
肥料の用途
植物の成長度合いに合わせて、その時々に最適な肥料を区分すると、元肥、追肥、置き肥など7種類となります。植物の成長度合いに合わせて、最適な時期に適切な量を施肥するようにしましょう。
区分用途
元肥(もとごえ)
植物を植え付ける前に事、元気に育つようにするため土と一緒に混ぜ込む肥料のこと。
追肥(おいごえ)
植物の生育状態に応じて必要な養分を追加で与えること。
置き肥
植物の生育期間中に養分を補うために与えます。緩やかに効き、植物へ養分を送ります。
お礼肥
花を咲かせたり、果実を獲った後の植物に疲れた株を回復させたりするために与えます。
寒肥
植物が休眠中の冬季に、養分を補うために施肥します。
芽だし肥
春先に元気な芽を出させることを目的として施肥します。
肥料の効き方
肥料には効果がゆっくり持続するものと、与えるとすぐに効果が現れるものがあり、前者を緩行性肥料、後者を速効性肥料といいます。さらに効き目が遅いものを遅効性肥料といいます。いずれも用途、樹種、成長速度、植物の状態などで使い分けます。
緩行性肥料
肥料効果が施肥後すぐに現れますが、一定期間、効果が持続する肥料のことです。植物に必要な三要素(窒素、リン酸、カリウムなど)の効果が安定して続いていくものと、特定の成分のみの効果が続いていくものがありますので、注意が必要です。元肥、追肥の両方に使用することができ、急激に溶けないために環境的にもやさしい肥料です。緩行性肥料には2つの分類があります。
・緩行性成分を使用した肥料
無機質性肥料、ク溶性、不溶性(※詳細は肥料の溶け方を御覧下さい)、これらに水溶性の原料を混ぜた肥料のことを言います。何を使用したかによって持続期間は違ってきます。肥料に含有する成分の、特定のものだけが緩行性のものもあります。
・被覆肥料
肥料の表面を水の浸透が遅い被膜でコーティングした肥料で、コーティングの暑さによって成分が溶け出る期間をコントロールでき、成分が平均的に浸透していきます。
油かす類、骨粉、鶏ふん、魚かすなどは緩行性の肥料となります。
速効性肥料
含有する成分がすぐに水に溶けて吸収され、すぐに効果が現れる肥料のことです。固形のものでは、水溶性の無機質肥料(硫安、尿素など)が該当しますが、家庭園芸用肥料では、液肥のことです。植物に吸収されたり、水やりのときに流出したりしてしまうため、効果は1週間程度です。
施肥の頻度が多く、手間はかかりますが、施肥後、すぐに植物に吸収されるので、管理しやすいという利点があります。追肥にもよく利用されます。
肥料の溶け方
肥料の生産業者保証書、販売業者保証票の保証成分量、肥料成分量の項目に表示されている、「水溶性」、「ク溶性」などの肥料の溶け方について解説しておきましょう。
水溶性成分
水に溶ける肥料成分のこと。水溶性の成分は水に溶けやすく、植物がすぐに吸収できる成分です。
ク溶性成分
水には溶けませんが、2%のクエン酸液で溶ける肥料成分のこと。徐々に溶け出すためにゆっくり効きます。
可溶性成分
水には溶けませんが、ある程度の溶性に溶ける肥料成分を指します。根から出る根酸で溶ける肥料成分、比較的早く植物に吸収されます。
不溶性成分
土中の微生物や発酵によって分解された後に、植物が吸収されるので、あとになって効果が現れます。酸でも溶けません。
施肥の仕方
1年を通して、生長速度が早いときもあれば、遅いときもあります。樹種によっても生長速度は違う傾向があります。
マツ類は5~6月に最も生長し、その後はほとんど生長せず、冬には冬眠機に入ってしまうものもあります。
スギやヒノキなどの松柏類は、春頃から6月に生長し、夏7~8月には一時的に生長がストップし、秋9~10月に再度生長し、冬になってくると生長がまたストップします。
樹種による、生長の仕方違いをよく理解して、肥料の与え方、時期などを見極めるようにしましょう。
施肥の注意点
時期を考える
冬季は、ほとんどの樹が休眠期に入り、活動が停止しますので、肥料は不要となります。夏も樹の生長があまりない時期ですので、肥料は不要となります。雨が多い時期、屋外にある盆栽は、肥料が流出や、植物が無駄に生長してしまいますので避けるようにします。
花芽分化樹に肥料を与えると、意味なく生長してしまいます。結実後は実がある程度大きくなるまで肥料を控えます。植え替え直後は、根が傷んでおり、樹勢も弱まっていますので肥料を控えます。
[避ける時期]
冬季
雨が多い時期
花芽分化期
結実後
植え替え直後
樹の様子を把握する
盆栽の基本は、樹が健康なことですので、弱っていたり疲れていたりするときに肥料を与えた方がいいのか否か、健康そうだからもっと元気にしようと余剰に与えますと、肥料やけを起こすこともありますので、それぞれの樹に合わせて施肥します。
肥料の規定量を守る
肥料のラベルや取り扱い・使用説明書をよく読んで、樹種や時期についてどれくらいの肥料が必要かをよく把握した上で、量や頻度、やり方を守って肥料を与えます。希釈の必要があるものであれば、希釈度を必ず守って下さい。
水やりをきちんとする
鉢土が乾燥している場合は、肥料成分が行き渡らなかったり、根っこが肥料やけしたりする場合がありますので、きちんと水やりをした上で施肥しましょう。
樹種による施肥の概要
松柏類
秋の施肥によって樹の生長が決まるとまで言われています。年間を通じて、葉が付いているので、いつでも施肥してもいいと考えるかもしれませんが、基本的には生育のはじまる早春から梅雨入りする6月頃までにかけて2、3回施肥します。
夏は肥料を控えて、8月下旬頃から10月頃までに再び2、3回施肥して、樹の生長を促します。冬は樹が葉を付けていても休眠状態になりますので、肥料を与えずにおきます。
肥料の種類
油かすだけでもかまいませんし、樹ができあがっているものには骨粉、魚かすなどを少量混ぜて使うと、枝葉がより生き生きするでしょう。
油かすは鉢土に半分埋め込むように与え、四隅から少し離して置くようにしましょう。
葉物類
松柏類と違って、生長期と休眠期がはっきりとわかりますが、施肥についてはほぼ同じとなっています。
発芽する早春から、樹の生長が盛んな梅雨頃までに2、3回肥料を施し、樹が充実期である9~10月に翌春に向けて養分を蓄えるために1、2回施肥します。
枝葉を肥大させないように、少ない量を何回かにわけて施肥する方が、効き目もあり、樹への負担も少ないです。
肥料の種類
松柏類と同じく油かすだけでもかまいませんが、紅葉を鑑賞したり、樹形を整えたりしたい盆栽の場合は、草木灰や骨粉を1~2割程度混合し、リン酸やカリウムの比率を増やして与えるといいでしょう。
花物類
花物盆栽の施肥は樹の開花期間によって変わってきますが、基本的には発芽期に行い、開花時期は控えめにします。梅雨に入るまでに2、3回肥料を与え、花芽の分化時期である夏の間は止めて、9月から晩秋の11月上旬までに1~2回施肥します。
花芽をつける生育期に肥料を与えすぎると、枝葉ばかりが生長してしまい、花の色や形に悪影響を及ぼしてしまいますので注意が必要です。
花芽分化期一覧表
種類花芽分化期開花時期
桜6月~8月翌年3~4月
長寿梅8月翌年1~3月
フジ6月中旬翌年4~5月
睡蓮木3月5月~10月
サツキ6月~8月翌年5月~6月
香丁木3月4月~6月
白丁花3月5月~10月
百日紅6月~8月7月~10月
銀梅花8月翌年6月~7月
椿6月~7月12月~翌年4月
野イバラ4月5月~6月
紅紫檀7月~9月翌年5~6月
あじさい10月翌年6~7月
木瓜8月下旬~9月上旬10月下旬~翌年4月
肥料の種類
油かすに骨粉を3割程度混ぜたものを使用します。窒素、リン酸、カリウムが同等成分含まれるものが花物類には有効です。
実物類
花と実のどちらも鑑賞期に当たるため、より注意が必要です。開花後、結実しはじめた頃に肥料が効いてきますと、芽が伸び始め、結実に悪影響を及ぼします。
花が咲くまでは、施肥については花物類と同じですが、結実後は実がある程度大きくなり安定してから、少しずつ与えて実を充実させていきます。
肥料の種類
窒素に対し、リン酸とカリウムが多くなるように油かす7~5割、骨粉3~5割程度に配合します。
樹種別肥料
松柏類
黒松・錦松
油かすを主体とした固形肥料
真夏と冬を除いて、大体隔月に置き肥を与えます。春(3月頃)は少なめにして、梅雨明け、8月下旬頃に与え、秋(10月頃)はたっぷり与えます。樹勢をつける意味で6月下旬~7月上旬の芽切りを行う際、1週間~10日前程度に液肥を補助的に使用します。
赤松
油かす7割、骨粉3割程度を混ぜた肥料
真夏、梅雨時、冬を除いて、大体1ヶ月に1回置き肥を与えます。比較的樹勢が弱いところもありますので注意します。
五葉松
油かす7割、骨粉3割程度を混ぜた肥料
肥料をしっかり与えて、樹勢を付けるようにします。春(4月、5月)の2回、夏(7月上旬)、秋(9月下旬~10月上旬)に各1回の計4回施肥します。
蝦夷松
油かす8割、骨粉2割程度を混ぜた肥料
真夏と冬を除き、芽を出す前の3月~5月に各1回、秋は9月、10月に施肥します。葉色が良くない場合は4月にハイポネックスを与えてみます。
杜松
油かす8割、骨粉2割程度を混ぜた肥料
4月~10月の生長期間中は次々と新芽が出て芽積みを繰り返すので、樹勢を弱らせないように夏と梅雨時を避け、月1回肥料を与えます。肥料を頻繁に与える場合、置き肥は1ヶ月程度で効果がなくなりますので、取り除いてから施肥します。
スギ
油かす8割、骨粉2割程度を混ぜた肥料
春から秋の生長期は真夏を避け月1回、春(4月、5月)、7月、9月の計4回施肥します。葉色がよくない場合は、4~9月の間に一度油かすの代わりにハイポネックスを与えてみます。
真柏
油かす7割、骨粉3割程度を混ぜた肥料
生長が早いので若い木でなければ肥料は控えめにします。3~5月に各1回、梅雨明けに様子を見て1回、9月~10月に1回施肥します。すでに充実した樹であれば春と秋に1回ずつでも十分です。
葉物類
モミジ・カエデ
油かすの置き肥か、水肥、化学肥料。油かすに、骨粉、草木灰などを混ぜた肥料。
芽が出てから6月中旬頃までに月1~2回施肥します。最初は量を少なく、濃度も薄くして徐々に多くしていきます。
ケヤキ
油かすのみの肥料。
芽が伸び始めた春先から肥料を与え、5月~6月上旬に葉刈りの前に樹勢を付けるため、1度施肥します。梅雨時から夏は肥料を控え、9月~10月に1回肥料を与えます。枝先の細やかさが鑑賞ポイントともなりますので、肥料を与えすぎないようにします。
ブナ
油かすのみの肥料。
芽が伸び始めた春先から梅雨時までに1~2回程施します。夏は避けて10月まで月1回程度施肥します。肥料が多すぎたり、効きすぎたりすると葉が青黒くなってきて、葉焼けをおこしやすくなりますので水やりに注意しましょう。
ソロ
油かすのみの肥料。
春に芽が2~3mmに伸びてから肥料を与え、以降梅雨時と夏を避けて、月1回施肥します。落葉後の肥料は不要です。
ヒメシャラ
油かすのみの肥料。
春に芽が伸び始めてから4~5月の梅雨入りまでに1回、梅雨時と夏は避けて、冬越しに向けて10月頃に施肥します。肥料は少なめにした方が、樹形が整います。与えすぎると枝が伸びすぎたり、きれいに紅葉しなくなったりしてしまいます。
イチョウ
油かすのみの肥料。
春に芽が伸び始めて~5月の梅雨入りまでに2回施肥します。夏は避け、9月~10月に紅葉留守までに月1回肥料を与えます。樹勢が非常に強いので、生長を抑えたいときや黄葉がきれいに進まないときは肥料を控えます。
ギョリュウ
油かすに骨粉を1~2割混ぜた肥料。
春に芽が伸び始めてから梅雨時を避け、秋まで毎月2~3回施肥します。肥料を大変好みますので、肥料切れが怒らないようにします。油かすの水肥は通常10~20倍に希釈して使用しますが、5~10倍の濃度でも肥料負けしません。
花物類
梅油かすに骨粉を混ぜた肥料 混合肥料、化成肥料も適宜
花が咲き終わったら寒い時期でも施す。施肥し始めたら毎月1回梅雨時から真夏を除いて肥料を与えます。9月、10月は各1回十分に施します。8月下旬から肥料やけをしないように、薄めに肥料を与えていきます。
桜
油かすに骨粉を混ぜた肥料
春に芽が伸びだした頃~10月まで梅雨時と真夏を避け、月1回肥料を与えます。
フジ
油かすに骨粉を3割り程度混ぜた肥料。窒素分が多すぎないもの。
他の花物類に比べて肥料を好みますので、生育中は肥料を切らさないようにします。花後に肥料を与え始めて、梅雨時から真夏を避けて、8月下旬~10月頃まで月1回施肥。お礼肥として花が咲いた後、窒素:リン酸:カリウム=5-10-6成分が入っている液肥を2回程施肥すると生育がよくなります。
サツキ
油かすか油かすに骨粉か魚粉を1~2割り程度加えた置き肥か水肥。
1月下旬~4月までは月1回、5月~6月の開花前と開花時期、真夏を避け、芽が出はじめる2~3月と樹が充実する8月下旬~9月に多めに施肥します。
百日紅
油かすに骨粉、魚粉を2割程度混ぜ込んだ肥料。
5月中下旬、開花直前の7月中旬、開花後の9月、10月に各1回施肥します。
木瓜
リン酸とカリウムを多めにするため、油かすに骨粉を3~4割配合した肥料。
花後の4月頃から施肥をし、梅雨時を避け7月中旬~8月に肥料を再開し、10月まで月1回施肥します。水肥も利用しますが、濃すぎると肥料やけを起こしますので、濃度に気をつけます。
椿
油かすに骨粉を3割程度混ぜた肥料。
新芽が出てきた4月~5月、花芽を付けさせるために6月~7月は肥料を控え、8月~10月に月1回施肥します。
実物類
ヒメリンゴ
リン酸を補うために、油かすに骨粉を5割混ぜたものか、油かす:骨粉:魚粉=5:3:2の割合の肥料。
結実し、実がある程度大きくなってから施肥し、夏は避けて、9月~10月に月1回肥料を与え、春の開花、新緑に備え1月に寒肥を施します。
カリン
リン酸を補うために、油かすに骨粉を5割混ぜた肥料。
結実し、実がある程度大きくなった4月下旬~5月上旬から梅雨入りまで月1回程度施肥し、夏は避けて、9月~10月に月1回肥料を与えます。肥料の効きは葉の色で判断し、効いていれば葉に光沢が出て、不足していれば黄ばんでしまいます。
マユミ
リン酸を補うために、油かすに骨粉を5割混ぜた肥料。
春に芽が出てから8月までに5~6回施肥します。実の色をよくするため9月から肥料を休止し、肥料切れの状態にします。その後10月か11月に肥料を1度与えます。実をたくさん付けますので、比例して肥料もたくさん昼用となります。肥料切れには十分注意しましょう。
ピラカンサ
リン酸を補うために、油かすに骨粉を3割混ぜた肥料。
春に芽が出始めてから梅雨時までに2~3回施肥します8月~10月に次年度の新芽のため秋肥を与えます。肥料を好みますが、水肥を使用する場合、頻度を多くして濃度はやや薄めを心がけましょう。
ウメモドキ
油かすに骨粉2割混ぜた肥料。
春に芽が出た頃から施肥し、開花、結実時期は休止します。実の様子を見ながら、6月頃から少しずつ肥料を与えはじめ、梅雨時は避け、10月までに薄めの肥料を毎月2~3回施肥します。肥料を好みますが、根が補足肥料負けしやすいので注意して下さい。
ミヤマカイドウ
油かすに骨粉を3割混ぜた肥料。
春に芽が出始めてから梅雨時までに2~3回施肥します。梅雨時と夏は避け、9月~10月に肥料を与えます。結実してからはやや多めに肥料を施しますが、与えすぎに注意しましょう。
ミザクロ
油かすに骨粉2割混ぜた肥料。
春に芽が出始めてから施肥するようにし、花後1回、秋は実が落ちた頃に1回、計3回、肥料を与えます。肥料を好みますので、肥料切れには注意しますが、薄めの肥料を心がけて下さい。