園芸の鉢花と盆栽の違いは何でしょうか。
よく言われるのは、園芸が花や草そのものを楽しむのに対して、盆栽は鉢の上に表現された情景を楽しむものだということです。
はじめてこれを聞いた時にはなるほどと思いました。
でもちょっと疑問もわいてきます。
私が思っていた園芸と盆栽の一番のわかりやすい違いといえば鉢が違うということでした。
園芸の鉢花は一般的に深く大きな鉢に植えられています。
盆栽は浅く平べったい小さな鉢に植えられます。
園芸で使用する大きく深い鉢に盆栽を植えるとこれは園芸になるのか?
園芸の鉢では自然の情景をあらわせないのか?
盆栽はなぜ小さい鉢に植えられているのか?
そういった疑問を持ちつつ盆栽を学んでいると、いろいろ経験するにつれてそれらは解決することができました。
私たちの目の前にある盆栽、その形、その鉢にはちゃんと意味があったのです。
すべては自然の情景をあらわす芸術に必要なことでした。
自然の木は根元が盛り上がり四方に伸びてどっしりと安定しています。盆栽の用語でこれを根張りといいますが、盆栽づくりにおいて根張りは自然の情景を表すためにもとても重要です。
根張をつくるためには浅く小さい鉢に植えないといけません。四方に横方向に根を張らせることで根張がつくられます。大きく深い鉢では下に下に根が伸びていくだけでなのです。
また、長い年月をかけりっぱな根張りをつくり、樹齢何百年を思わせる盆栽が出来たとします。
その樹の風格、品格に似合う足元の鉢はやはり、同じように長い年月をかけて存在し、見る者を魅了する骨董品のような鉢ではないでしょうか。
そこまではいかなくともホームセンターで買えるプラスチックの園芸鉢ではないはずです。
盆栽に品格をつくっていく作業。これが盆栽の楽しみ方のひとつでもあります。