大きさや樹種、楽しみ方などで細かく分類される盆栽。それぞれについて詳しく解説します。
盆栽の種類
前述のように、「盆栽」は大きさによる分類と、樹種による分類があります。
「盆栽」を大きさ(樹高)で分類すると、大別して「大品(普通)盆栽」、「中品盆栽」、「小品盆栽」の3つとなり、中品盆栽の中でも小品盆栽よりの小さめのものを「貴風盆栽」、「小品盆栽」も細分化されており、大きさにより「ミニ盆栽」、「プチ盆栽」、「豆盆栽」などと分けて呼んでいます。
分類名 | 小分類 | 樹高 |
---|---|---|
大品(普通)盆栽 | 盆栽50cm以上 | |
中品盆栽 | 20cm〜50cm | |
貴風(きふう)盆栽 | 20cm〜35cm | |
小品盆栽 | 20cm以下 | |
ミニ盆栽 | 10cm以下 | |
プチ盆栽 | 5cm以下 | |
豆盆栽 | 3〜4cm以下 |
ただし、大きさによる分類は、定義がはっきりしない点もあり、樹形やボリュームによって変化したり、人によって異なることもあります。
※大品盆栽が40cm以上、45cm以上、60cm以上と定義されている場合もあります。
盆栽のメンテナンス、いわゆる剪定、芽摘み、針金かけなどは樹の健康状態を保ち、木の大きさを抑制するために行われ、大きくても100cm〜120cm未満に保たれています。
一概には言えませんが、同じ機種なら大きい方が、樹齢の高いものが大半であり、同じ作業を行うにあたっても労力がかかります。樹高20cm以上の樹形のよい盆栽に仕立てるためには、やはりある程度の年月がかかってきます。盆栽づくり、盆栽鑑賞の醍醐味を存分に味わえるのも、大きいものであるかもしれません。
ただし、大きい盆栽を購入する場合、高額なものが多く、維持するのも大変になってきます。盆栽を始めようという方、始めたばかりという方は、大きいものに比べて小さいものの方が手入れもしやすくおすすめです。
小品盆栽、ミニ盆栽であれば、少ない用土と肥料、手のひらサイズの省スペースで維持・管理ができます。盆栽の樹形に新たな手を加え作り直す場合、小さい盆栽は仕上がりも早く、扱いやすいというメリットがあります。大きい盆栽に比べ、コストも抑えることができます。
とはいっても、小さい盆栽の管理は簡単とは言えません。小さい盆栽は水切れが早く、少ない肥料と用土で樹の健康状態を維持し、花や実をつけるようにするには、一定の技術が必要となってきます。
盆栽作りに何十年もかけるなんてとても無理、という方は、ミニ盆栽であれば通常3〜4年で鑑賞できる姿になり、早いものでは、購入した年や翌年から花や実を付けるものがあります。
素材となる樹も安価、現代の住宅事情に合わせた省スペースで育成・鑑賞できるので、少しでも盆栽に興味を覚えた方は、気軽に試してみてもいいでしょう。気軽に様々な樹種が楽しめ、小さくとも四季折々の日本の風情を、大きい盆栽同様に感じられるはずです。
ご自分の好み、スペース、時間などを考慮しつつ、ライフスタイルに合った大きさの盆栽を選択することが最良と言えるでしょう。
何十年、もしかしたら何百年も手がかけられた立派な樹姿の盆栽を、専門店や展覧会などで眺め、鑑賞眼を養うと、盆栽の大小に関わらず、盆栽作りもより満足できるものになるのではないでしょうか。
盆栽に使われる樹
盆栽には多くの植物が使われています。
基本的には、盆栽は長い年月に渡って鑑賞することが前提となりますので、樹齢が長いということが第一条件となります。
草物の場合は他の長い歳月を必要とする樹木の盆栽とは違い、短い機関で趣の味わえる盆栽を作ることができます。昨今では、草物が脇役の場合は、主役である樹を引き立てることが役割ですので、実生、挿木、株分けなどにより、追加したり、削除したりされていきます。
次の条件としては、枝打ちのよさが挙げられます。樹形を作るにあたって枝が出やすいものは比較的簡単です。樹高や葉を小さくできるものであれば、盆栽の醍醐味でもある、自然にある樹をそのまま縮小したような景観=縮景を投影することができます。
植物の実、葉、果実などが美しい、変わっていることなどは重要ではなく、長期間に渡って鑑賞していくため、より自然の姿に近いものがふさわしいと言えるでしょう。
上記のような特性の植物は身近にあるものです。庭木の大部分の植物は盆栽になります。
自然の植物でも様々なバリエーションがあります。土地土地の風土にあった植物も盆栽に向いていると言ってもいいでしょう。
盆栽の樹種
盆栽は絶対にこの樹種でないという決まりはありませんが、代表的な機種は5種類、「松柏類」「雑木(葉物)類」「花物類」「実物類」「草物類」があります。
盆栽に使われる樹は日本産のものも多くありますが、海外産の樹も日本にたくさん入ってきており、中国、朝鮮半島など東アジアが原産のものもたくさんあります。
近年、様々な外国産の樹木が日本に入ってきており、これらの中には日本で栽培することに適したものが多々あります。
それぞれの樹種が、どのようなルーツを持ち、どのような背景で仕立てられてきたのかを知ることでも、盆栽の楽しみ方はより深まっていくでしょう。
海外での盆栽人気が高まっていく中で、各国の文化を象徴するような独特の盆栽も登場しています。例えばハワイや東南アジアでは、ブーゲンビレアやハイビスカスなどの熱帯産の樹が盆栽として仕立てられています。サボテンやアロエといった多肉植物を盆栽に仕立てる「多肉盆栽」というものもあります。
盆栽は古今東西の様々な樹種、植物を取り入れ、裾野を広げているのです。
それでは盆栽の主な5種類の樹種について、順に見て行きましょう。
松柏類
気品と風格が漂う盆栽の主流樹種
松・杉・檜(ヒノキ)・真柏(シンパク)・杜松(トショウ)・イチイなどを含む針葉樹類の総称です。日本国内に多数植えられており、日本の景色を作り出す上で欠くことのできない程多く見られ、盆栽の中でも一番知名度の高い種類でしょう。寿命が長く、風雪に強く、四季を通じて緑を失うことがないので、不老長寿の象徴と言われていました。
丈夫なので初心者にも比較的扱いやすく、常緑樹なので、1年中緑を楽しむことができます。
樹種一覧
赤松 | イチイ(一位) | エゾマツ(蝦夷松) | カラマツ(唐松 落葉松) |
黒松 | コトブキマツ(寿松) | コメツガスギ | 五葉松 |
シンパク(真柏) | 睡蓮木 | トショウ(杜松) | トド松 |
ニシキマツ(錦松) | ヒノキ(檜) |
雑木(葉物)類
季節の移り変わりが特に楽しめる樹種
いわゆる欅(ケヤキ)、紅葉、楓(カエデ)、(ブナ)など松柏を除いた樹や樹木などの木本(もくほん)植物のことを指します。種類が豊富で、落葉樹が多いです。歴史が長いもののほとんどは日本・中国を原産としています。
針葉樹と違って1年中緑を見る事はできませんが、春の新芽、夏の緑、秋の紅葉、冬の落ち葉など、年間を通じて楽しむことができます。樹勢が強く、育てやすいものが多い反面、枝数を増やすと共に、姿を整える必要があります。
樹種一覧
花物類
樹姿や景観を楽しむ盆栽の中でも、花を見て楽しむ樹種
桜、梅、木瓜(ボケ)、皐月(サツキ)、藤などとなります。どちらかといえば花に重点が置かれている事が多いのですが、木振り、枝振りなども大事です。
花物類では、花芽をつけるための処置が必要となり、花芽のつく習性や場所を知って、花芽の分化時期に生育を抑えることが必要となります。鉢、用土などもよく考えねばなりません。花の咲く時期が最高の鑑賞期となります。
育てやすく管理に特別な手段を必要としないというのも重要なポイントです。
樹種一覧
アジサイ(紫陽花) | アセビ | 梅 | オウバイ |
桔梗 | ギボウシ(擬宝珠) | ギンバイカ(銀梅花) | キンロバイ(金露梅) |
クチナシ | クリスマスローズ | コウチョウギ(香丁木) | 桜 |
サルスベリ | 長寿梅 | ツクモドウダンツツジ | ツツジ |
ツバキ | トサミズキ | ネムノキ | ノイバラ |
ハイビスカス | ハギ | バラ | 姫水木 |
ブーゲンビリア | 藤 | 紅紫檀 | ボケ |
マンサク | モクレン | レンギョウ |
実物類
果実を鑑賞することに主体を置いた樹種
姫林檎(ヒメリンゴ)、花梨、柘榴(ザクロ)など、花の目立たない、真弓、梅もどきなど、果実の形の変わったものには木通(アケビ)、仏手柑(ブッシュカン)、美男カズラなどがあります。
秋になると美しい実をつけるのが特徴で、花より実の方が鑑賞価値が高いものが分類されます。花物類と同じく、果実だけに重点を置くのではなく、木振りなどの盆栽らしさも要求され、果実の大きさと盆樹との調和がとれていることが必要となってきます。結実後の管理が重要となります。
樹種一覧
ザクロ | サネカズラ | サンザシ(山査子) | 真珠の木 |
ズミ | タチバナモドキ | ツルウメモドキ | ナツボウズ |
ナナカマド | 南天 | ニシキギ | ピラカンサ |
美男カズラ | マユミ | 万両 | ミヤマカイドウ |
紫式部 | メギ | ヤブコウジ | ユスラウメ |
りんご | ロウヤガキ(老爺柿) |
草物類
山に自生する「山草」や野原に自生する「野草」などの樹種
草物類は、単独で飾って鑑賞するというよりは、竹や笹などを盆栽の添え物としたり、数種類の野草や山草などを寄せ植えにして、花畑や野原など山野の景色を再現したりします。
初心者にでも簡単に、短期間で育てることができます。また花を咲かせた後に枯れてしまったり、覚えのない植物が鉢から顔を出し始めたりと、予想外な楽しみが多いのも「草もの」の特徴です。
樹種一覧
イワヒバ(岩檜葉) | 猩々(しょうじょう)バカマ | チゴ笹 | トキワシノブ |
ナゴラン(蘭) | ヒナ草(ヒナソウ) | ヒメタケ(姫竹) | ベニチガヤ |
富貴ラン(蘭) | 風ラン(蘭) |
※植物ごとの盆栽の育て方、管理方法については機種別育て方を御覧下さい。
その他の盆栽
単独の盆栽とは違い、同種類の植物を同じ鉢に何本も植えるもの、異なった植物や造形物を組み合わせたりする‘寄せ植え盆栽’や、華やかさで写実的な描写を主とする‘彩花盆栽’、水やりの必要のない‘ドライ盆栽’などもあります。
寄せ植え盆栽
何本かの植物を一つの鉢にまとめることで、森や林のような樹木の集まりの美しさを表現する盆栽です。単独だと形が悪いものでも、バランスよく木を組み合わせれば、まとまりのある美しい景色を作ることができます。
鉢の中の木や草の配置、様々な角度から眺めたときにバランスがよいかどうか、植えた植物が倒れないように注意を払って配置することが必要です。初心者の方には少々難しいかもしれません。
彩花盆栽
伝統的な盆栽に対し、写実的なより華やかな風景描写をモットーとする盆栽です。木に草花を添えて小さな庭を作るように寄せ植えの盆栽を作ります。木と草花の配し方、景色を引き立たせる鉢との合わせ方に重点を置いており、季節の草花をあしらった彩り豊かな盆栽です。気軽にカジュアルに盆栽をはじめてみたい方、女性などにも仕立てやすい盆栽と言えるでしょう。
ドライ盆栽
盆栽は通常、生きている樹を、水やり、剪定、植替え、枝づくり、施肥などし管理に大変な時間と技術が必要となりますが、「枯れた状態」であるため、そういったメンテナンスが不要となります。生きている盆栽を厳選し、土を落とし、乾燥させ、葉を手で積んで、無駄な枝や根を剪定して完成させます。盆栽がもつ自然の曲線や美しさを鑑賞することができ、‘枯れ盆栽’とも言われています。
マン盆栽
草木の上や周辺にフィギュアなどを配置することで、ジオラマのようなドラマ性を作り出すことが特徴。難しい流儀や決まりごとはなく、作り手自身の自然観や社会への視点、人間の捉え方などが鉢の中に表現されています。テーマ選びのセンスや、それを描くユーモアのセンスが決めてとなってきます。剪定や、水やりなどのメンテンナスは普通の盆栽と同じく必要です。